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【漫画『太陽の塔』①巻発売記念】森見登美彦の原点に挑む漫画家・かしのこおり╳映画『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督、奇跡の「同窓生」対談をウェブ公開!

19/01/18
森見登美彦氏の伝説のデビュー作を、俊才・かしのこおり氏が渾身のコミカライズ! 月刊「モーニング・ツー」連載中の『太陽の塔』は、ただいま単行本第①巻が大好評発売中です!


待望の単行本化を記念し、月刊「モーニング・ツー」2019年2号誌上で実現した、同じく森見登美彦氏原作の映画『ペンギン・ハイウェイ』の石田祐康監督との特別対談を、このたび当サイトでもウェブ公開いたします! ぜひご覧ください。


今年8月に公開され好評を博した森見登美彦原作の映画『ペンギン・ハイウェイ』。
監督を務めたのは俊英・石田祐康氏。
彼はなんと、漫画家・かしのこおり氏と同じ高校出身、
しかも一学年後輩という間柄だった。
ほぼ時を同じくして、森見作品に携わることになった
同窓生二人の運命的な対談が実現!


漫画『太陽の塔』はちょうどいい「塩梅あんばい

かしのこおり(以下、かしの) 『ペンギン・ハイウェイ』面白かったです!

石田祐康(以下、石田) ありがとうございます。僕も漫画、面白かったです。なんというか、いい「塩梅」で。

かしの 石田さんは、原作の『太陽の塔』はお読みになったことはありますか。

石田 京都の大学に通っている時に読んだことがあります。この「小汚さ」が面白いなって。ちょうど『四畳半神話大系』がアニメで話題になった時期で、この作者の原点の作品は読んでおこうと。まさか15年越しで漫画化されるなんて考えてもいなかったですけどね。森見さんとしても嬉しいんじゃないですかね。

——実際にすごく喜んでいただけました。

石田 この生活感がある「小汚さ」。世界がほどよく狭い感じ。それでいて文化的な香りも同時にする。……そんなバランス感覚が素晴らしいです。若干、アングラなところもいいですね。どうしようもないモヤモヤ感とブラックユーモアあふれるシュールな感じも個人的には好きです。キャラクターたちも、それぞれ「小汚い」けれど愛嬌があります。

かしの 小説でも愛嬌がありますよね。憎めないというか。

石田 飾磨しかまなんて特にそうですね。このイケてない髪型とスネ夫君的な造形がたまらないです。それに対して、水尾さんや植村嬢といった女の子はかなりかわいい…!


主人公の悪友・飾磨。

主人公の悪友・飾磨。

主人公の元彼女・水尾さん。

主人公の元彼女・水尾さん。


——地獄のような世界に、彩りを添えてくれています。

石田 1話目のこのページとか、描き方がいいですよね。かわいくデフォルメしてて。全方位にわたって「塩梅」がいい。キャラクターデザインにしても、トーンやベタの情報量も描き込み過ぎずに想像の余地を残している。けれど、「小汚さ」にはこだわっているのが伝わります。カラーイラストの昭和な感じもいいですね。

かしの 昭和の赤をイメージして朱色にしました。監督の作品は『フミコの告白』(※石田監督が2009年に発表した自主制作作品。第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞、2010年オタワ国際アニメーションフェスティバル特別賞、第9回 東京アニメアワード学生部門優秀賞など数々の賞を受賞した。)から見てるんですけど、すごく色使いがきれいですよね。『ペンギン・ハイウェイ』作中のお菓子の詰め合わせのような街のカラフルな感じとか。

石田 『ペンギン・ハイウェイ』だったから良かった所がありますね。『太陽の塔』だと、情報量を抑えた塗り方や演出で、なかなか難しかったと思います。

かしの 同じ原作者なのに、これだけ違うっていうのは面白いですよね。



森見作品をビジュアル化するには

石田 森見さんの作品をビジュアル化しようとする時に、何か方向性というか柱になるものを決めて描いたりはしたんですか?

かしの ほとんど感覚的ですね。ただ小説の地の文が『太陽の塔』の特徴なので、漫画にした時にその雰囲気をできるだけ残したいとは思いました。『ペンギン・ハイウェイ』もある程度そういうところがあったと思いますけど、『太陽の塔』は出来事だけを切り取っちゃうと魅力が半減してしまうので。

石田 たしかに原作で面白かった語りの部分がいい感じに生かされていますよね。よくぞ拾ってくださいましたって(笑)。


かしの 森見さんの小説の特徴的な文体を生かしたいけど、ビジュアルで表現しようと思ったら使えない……みたいな悩みは石田さんにもありましたか?

石田 悩みましたね。『太陽の塔』の主人公と同じで、アオヤマ君も主人公の脳内でアレコレ論理的に考えるんだけど、それが思わぬ方向に行ってしまうんです。そこが面白いところなんですけど、忠実に再現すると絵の領分がどんどん狭くなってしまう。『ペンギン・ハイウェイ』って一見かわいい作品なんですけど、実は不気味だったり怖かったりする場面がそこかしこにあって、むしろそっちがメインなんじゃないかと考え直したんです。それを伝えるために、作品世界を説得力ある形で描く必要が出てきた。背景描写を緻密にして、絵から読み取ってもらうところを増やしていきました。

かしの 気持ちはすごく分かります。絵でなるべく説明していきたいですよね。

石田 クリスマスに猫に追いかけられるところは、絵で作品の雰囲気を説明していてよかったですね。


クリスマスを模した猫に追われる主人公。

クリスマスを模した猫に追われる主人公。


かしの 原作にはなかった描写なんですけど、原作が持つ文章の雰囲気を漫画的に面白く伝えられないかなって思って出てきたシーンですね。実は、原作とは違った伝え方をしているところは結構あります。



イメージが浮かぶのは原作の力が大きいから

——かしのさんは、『ペンギン・ハイウェイ』の中で一番好きなシーンはどこでしたか?

かしの 全部好きなんですけど、特に自動販売機の近くで歯科医院のお姉さんに歯を抜かれるシーンが好きでした。

石田 アオヤマ君が自動販売機に縛りつけられているところですか?

かしの お姉さんに歯を抜いてもらうまでの一連のシーンが、何回も見ちゃうぐらい好きなんですよ。お姉さんに歯に糸を1本くくりつけられるんですが、いざ抜かれるとなると怖くなって、糸を引っ張るお姉さんにトコトコついていくんです。

石田 その前の、アオヤマ君とお姉さんのやりとりもこだわりました。自動販売機のシーンは、実は本番の絵コンテを描き始める前に、テストで描き始めたところなんです。作品全体の雰囲気をつかむためには、あのシーンが一番だと思って。お姉さんがアオヤマ君をイジって、あの手この手で負かしていくという構図が、この作品の重要な柱になるんだろうなって思っていたので、そういうシーンを先に構築したんです。


アオヤマ君はミステリアスなお姉さんに翻弄されていく。<br>©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

アオヤマ君はミステリアスなお姉さんに翻弄されていく。
©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会


かしの 他にも子どもの視点というか、アオヤマ君の見た世界が映画で表現されていますよね。すごく綺麗な演出の仕方もあれば、アオヤマ君が見る夢は怖かったりもする。森見先生の小説って空想が出てくることが多いじゃないですか。それを映像にする時に悩んだりはしましたか?


空想的なイメージも本作の見どころ。<br>©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

空想的なイメージも本作の見どころ。
©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会


石田 原作では、アオヤマ君の夢のシーンがたびたび出てくるのですが、そこは悩みどころでした。お姉さんやシロナガスクジラやカンブリア紀の海など、象徴的なビジュアルが多く出てくるのですが、尺の関係上すべてを再現することはできないし、映像的に一つの意味を持たせたい。考えた末に、お姉さんが作ったペンギンが進化論的にどんどんさかのぼって、最後はカンブリア紀の海、原始生物などの細胞になっていくという流れにしました。それを通して、お姉さんが人間ではなく、生命の循環のひとつ、未知なる存在であることと、アオヤマ君から場所も時間においても遠くへ離れていってしまうような感覚を描きたかったんですね。アオヤマ君が生命の神秘に触れると同時に、お姉さんがいなくなってしまうという「悪夢」の意味を持たせたんです。

かしの 印象的なシーンですよね。

石田 他のシーンとも質感を変えました。森見さんご本人も、あまり論理立てず、インスピーレションで書くことが多いとおっしゃっていました。森見さんが潜在的に思っていたことを純粋にそのまま文章にしているんでしょうね。だから、あれほど鮮烈なんだと思います。ああいったイメージが浮かんだのも、森見先生の作品の懐の深さがあったからだと思います。『ペンギン・ハイウェイ』はいろいろと遊べて面白かったですね。


かしの 漫画の『太陽の塔』も、これから妄想のシーンに入る場面が多くなると思うんです。どうやって描いていこうかなって思っていたんですけど、『ペンギン・ハイウェイ』で妄想がキレイに入るのを見て刺激されました。私も自由にやっちゃおうかなって。

石田 いいと思いますよ。僕は、8割は原作の意図していたことを守りたかったんですが、残り2割ぐらいは遊ばせてもらおう、というバランス感覚でやりました。かしのさんは、そのバランスが絶妙だと思います。『太陽の塔』には、はっきりと妄想とわかるシーンがあって、そこはかしのさんの遊びどころなんじゃないかなと。さらに面白い妄想をこれから先も読んでみたいです。

かしの プレッシャーを感じます(笑)。でも、ありがとうございます! 🐧


<b>石田祐康(いしだ・ひろやす)</b><br>1988年、愛知県出身。高校2年時に処女作『愛のあいさつ―Greeting of love』を発表。2009年『フミコの告白』で、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞をはじめ数々の賞を受賞。以降、『rain town』『陽なたのアオシグレ』『ポレットのイス』などを発表。『ペンギン・ハイウェイ』が初の長編アニメ作品となる。

石田祐康(いしだ・ひろやす)
1988年、愛知県出身。高校2年時に処女作『愛のあいさつ―Greeting of love』を発表。2009年『フミコの告白』で、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞をはじめ数々の賞を受賞。以降、『rain town』『陽なたのアオシグレ』『ポレットのイス』などを発表。『ペンギン・ハイウェイ』が初の長編アニメ作品となる。



『ペンギン・ハイウェイ』Blu-ray&DVD、1月30日(水)発売!

©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

©2018森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会


  • 【Blu-rayコレクターズエディション】 8800円(税別)
  • 【Blu-rayスタンダードエディション】 4800円(税別)
  • 【DVDスタンダードエディション】 3800円(税別)
  • 【発売元】 東宝/フジテレビジョン 【販売元】 東宝


Blu-rayコレクターズエディションには豪華三大特典を封入!

  • 【特典①】 アオヤマ君が研究結果を書き連ねていたノートの完全版
  • 【特典②】 石田監督がツイッターに掲載していた『ペンギン・ハイウェイ』イラストを一つにまとめた「イシダ君のノート」
  • 【特典③】 映画全編の絵コンテ集


あらすじ

小学4年生の夏休み。アオヤマ君の住む海のない街に突然ペンギンが現れる。日頃から勉強熱心なアオヤマ君はこの奇妙なペンギンの研究を始めるが、謎は深まるばかり。そんなある日、アオヤマ君は、仲がいい歯科医院の“お姉さん”が投げたコーラの缶がペンギンに変身する瞬間を目撃する——。


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