【大賞】
『ハイテックCの話』
佐藤明日香
賞金💰33万円
「モーニング」「週刊Dモーニング」掲載
※掲載号未定。決定次第お知らせします。
事務局より
タイトル通り、パイロットのボールペン「ハイテックC」にまつわる話を圧倒的な熱量で描き綴ってくれました。仕事も恋愛も、これまでの生活すべては「ハイテックC」のおかげと言い切る“偏愛ぶり”が常軌を逸しています。展覧会を見に来た方から、「ボールペン画なんて成功するわけない」と言われた際、それでも「ハイテックCが好き」と決意を新たにするシーンがとくに印象的でした。清野審査員も「手書きの「字」すら、味わい深い「絵」に見えた。読んでるこっちまでハイテックCのことが好きだと錯覚し、この作品を読んで文房具屋に行った際、ついハイテックCを探しちゃってる自分がいた」と言うように、読者を「そそのかす」力も強かったです。
【入選】
『ネコのいる、サルの生活。』
イマイカツホ
賞金💰22万円
6/27配信「週刊Dモーニング」30号掲載
事務局より
「この猫のデフォルメは出来るようで出来ないですよね。実にかわいく猫を描く方です。実際に、この猫に会ってみたくなりました。僕は基本、『犬派』なんですけどね。」と清野審査員が言うように、読むと猫に会いたくなる猫漫画。もらってきた当初は猫アレルギーに苦しんだ作者だが、そのアレルギーが収まった瞬間の感動は読む者の心の奥底を揺さぶりました。会うべくして会った一人と一匹の“必然的な”奇跡を過不足なく最適な筆致で描いていたように思います。
【佳作】
『いつの日か、集めたウンチで空を飛ぼう。』
ナクヤムパンリエッタ
賞金💰11万円
「コミックDAYS」にて6/27配信
事務局より
「世界観が確立していて、読者を力強く自身の世界に引き込んで読ませる力が圧倒的だった。内容も、終始共感しっぱなしでした」(清野審査員)。また、セリフのキレも光っており、この作者だけが描ける漫画という印象をすさまじく感じました。2話目はタナカカツキさんの『サ道』にオマージュを捧げていた話でしたが、もう少し作者なりのサウナや「ととのい」への想いを描いてほしかったです。
【奨励賞】
『Toi et Moi』
大林桃子
賞金💰3万円
チーフからの強い要請があり「ベビモフ」7/1公開号掲載
事務局より
「ライス派の自分も、うっかりパンが食べたくなりました。絵もオシャンティーで、内容次第では今すぐにでも売れっ子になりそうな予感」と清野審査員が言うように、フランス人夫によるおいしいフランスパンへのこだわりに感化される作品。パンとともにテーマになっている国際結婚の大変さとその幸せも端正な絵によって瑞々しく綴られていて高評価。二人の馴れ初めや人物像をもう少し丁寧に描いていれば、より作品世界に入り込め、感情移入できたような気がします。
【期待賞】
『おれたちのダイエードチャクソフェスティバル』
斎藤充博
賞金💰1万円
事務局より
身近にあった、どうでもいいことを、実におもしろく見せる作品。「タイトルの『ドチャクソ』が最高。この以上にふさわしいタイトルはないと思う。全体に流れる緩~い雰囲気も好みです」(清野審査員)。作者はライターとしても活躍しているだけあって、過不足なく読ませる作品を作る技術は高かったです。
【期待賞】
『マッチングアプリで会った人だろ!』
冬野梅子
賞金💰1万円
事務局より
「感情を言葉に変換するセンスがすごかった。この作者にしか書けない面白いセリフもたくさんありました。ありそうでなさそうなポップな絵も素敵。」(清野審査員)。担当が「文化人類学の資料と言える大作」というように、濃密に描かれた体験記は素晴らしく、語りの途中にくるくる変わる作者自身の造詣も面白かったが、文字量とページ数は少しボリュームがありすぎたように感じました。
【この出会いに感謝で賞】
『テレビマンのダンナがちょっと変わっている件』
はる華
賞金💰5千円
事務局より
「テレビマンの旦那さんの愛すべきヒョウキンな日常を、優しく温かく綴っている。読後感も良かったです」と清野審査員が評価していたように、「父ちゃんゼリー」と称され、子供たちに熱望されていたゼリー作りなど、日々の生活の小さな喜びを楽しく見せるのが、とてもうまい。旦那さんの仕事のことにももう少し詳しく触れて、そのギャップを出すなどすれば、旦那さんの「ファンシーさ」がより際立ったかもしれません。
【この出会いに感謝で賞】
『釜ヶ崎のタダさん』
高木ちえこ
賞金💰5千円
事務局より
手を握っただけで、利用者がお酒を何杯飲んでいるか当てられるという、身につけたくもない“特殊技能”を作者が獲得してしまうあたりなど、釜ヶ崎のNPO法人に通っている作者ならではの体験が光っていた。「NPO法人に集う人々と作者のあたたかい交流は心を鷲づかみにされた。絵も構成も安定感があって、プロの仕事だと思いました」(清野審査員)。事務局としては、もう少し「タダさん」の人となりや作者が釜ヶ崎に通っている理由など登場人物の来歴がわかると決めのシーンがもっと映えたように思います。
【まずは友達から始めま賞】
『僕は今、宮城県石巻市の実家へ帰って傍若無人に親孝行がしたいんだ!』
佐々木夏行
賞金💰清野氏が手ずから銭洗い天神でお清めした縁起の良い5円
+清野氏が身銭を切って購入した「財運向上」のお札
事務局より
好き嫌いがハッキリ分かれる作品ですが、「親孝行」をバトルにするあたりや独特のモノローグとセリフには未知の可能性を感じます。「この世界観、癖になりそうですね。飲食シーンも、絵は落書きみたいなのに、何故か妙にそそられた。彼の今後の作品にも期待しちゃいます」(清野審査員)。ちなみに作品で触れていたビールの注ぎ方は本人のオリジナルだそうで、創意工夫を欠かさないところにも未知すぎる可能性を感じました。